Everything About Her

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先週はセブ工場へ出張だった。飛行機の中で上映される映画を見ようと思ったら、前回8月に渡航した時から全然ラインナップが変わっていない。むむむ。フィリピン航空、経営が苦しいんか?

いろいろ見てしまった映画も多く、あまり気乗りはしないが「ジャングルブック」でも見ようと再生したが開始5分過ぎで豹が英語を話すのを見て止めた。こんなに流暢に話せるって文明度、高っ!っていうか、こんな秘境で誰がそんな華麗な英語教えた?その前に、そもそもなぜ豹がしゃべる?!と思って感情移入が出来ない。

迷った挙句に選んだのがフィリピン映画の「Everything About Her」。タガログ語映画だが英語字幕がついていた。ラッキー。

内容は、大手不動産会社を経営するも癌と診断された女社長が、その身の回りの世話をさせるためにプライベートで雇った看護師女性との交流によって、絶縁状態だった息子と和解していくというストーリー。

たった一本見たからと言ってフィリピン映画を語るのもおこがましいが、この作品がとてもフィリピンらしい。

大女優ビルマ・サントスが演じる女社長は家族よりキャリアを優先し社会的に成功。しかし愛する息子は口も聞いてくれない。息子は自分のことを捨てた母親を大人になってもまだ許せないでいる。

一方、こんなにセクシーできれいな女の子ならもっと違う職業についた方がよっぽど稼げるんじゃないかと思わずにはいられない、フィリピンの人気女優エンジェル・ロクシン演じる看護師は、出稼ぎで家を離れた母親を恨みつつ、母親への強い思いを隠し気丈な長女として一家を支えている。

冷ややかな目で見ると、いい歳をした立派な社会人なのに社長として成功した母親の苦労への理解も示さず母親を責める息子も大人げないし、これまた弟や妹を経済的に支えているなら出稼ぎに行かざるを得なかった母親の心境を理解して当然なんだがそれが許せない看護師の姉ちゃんも大人げない。

しかしフィリピンの家族愛は絶対だ。家族のために犠牲になる、家族が居ないと不幸、家族は絶対裏切らない、家族は多い方が良い等、昨今の日本とは価値観がだいぶ異なる。裕福でなくても家族が居れば幸せ。家族が居なければ不幸。家族が多ければ幸せの度合いが大きく、家族が少なければ寂しい。

それを、精神的に家族に依存し独立心が薄いという言い方で否定するのは、個人主義の進んだ近代的な価値観に毒されているとはいえないだろうか。少子高齢化とその対策について明るい未来が見いだせずに経済発展にも陰りが見える日本と、着々と経済成長を果たし勢いのあるフィリピンと、一体どちらの方が夢を持てるのか。

この映画を当たり前のように肯定的に捉えられない・共感できないとすれば、それこそが日本人の抱える闇なんじゃないかと、朝8時出発の飛行機なのに早々と酔っ払いながら見た映画に考えさせられたのであった。