エピソード

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採用を「採用学」として科学的、学術的に研究している横浜国立大学の服部先生が、「大学生の採用がエピソードに偏重している」と指摘している記事を見た。どの企業もエントリーシートから面接まで、苦労したエピソード、頑張ったエピソードなどを学生から聞き取り採用の手がかりとしているわけだが、それが行き過ぎているのではないかというのだ。

たしかに、留学していたとか、その留学先でとんでもない事件に巻き込まれて切り抜けたとか、所属していた部活が優勝したとか大敗北を喫したとか、エピソードがあるとエントリーシートも書きやすいし面接でも話がまとまりやすい。

だがこれが行き過ぎると学生も就職のためには何かエピソードが無いといけないと勘違いしてしまい、無理矢理にボランティアに参加したり、海外に出てみたり、学生団体を立ち上げたりと、本末転倒になってしまう。というより、一部の学生は就職向けのエピソードづくりに奔走しているのが見受けられる。

採用がエピソードに偏重する原因の一つはエントリーシートだろう。普通に学校行って普通にアルバイトして普通にサークル行ってました、という真面目な学生はどうしてもエントリーシートが書きにくい。選ぶ企業サイドは、大手企業なら何百、何千というエントリーシートをチェックするわけで、どうしたって「全国1位になりました」とか「死にそうになったことがある」とか、特徴のある物を選びたがる。

エピソード偏重のもう一つの理由は企業に選考のノウハウが足りないからだ。華々しいエピソードは無いものの能力は秘めていて、活躍のステージさえ与えれば蝶のごとく蛹から脱皮して華々しく羽ばたく者が居るかもしれない。だがそれを見抜く方法が確立していないものだから、他社と同じように相変わらずエントリーシートに頼って表層的な部分だけを追いかけることになる。

テクダイヤとしてはこういう一見地味だが力を秘めている学生を採用することが望ましい。100人が見れば100人とも「すごい」と分かるような優秀な学生は、どうしても大手企業に採られてしまう。ならば大手とバッティングしない、むしろ表面的なエピソードには騙されず、潜在的な優秀層を採りにいきたいと思う。