好きなことを仕事にすべきか?

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一番素晴らしい仕事というのは「自分の好きなことで他人から尊敬され、お金がもらえること」という3つを兼ね備えていること、らしい。しかし世の中そうそう甘くはないので、3つが同時に存在することは少ない。

「好きではないけどお金は儲かる」だと風俗の仕事だし、「好きでやっててお金がもらえるけど尊敬されない」となるとパチプロか。「好きで尊敬されるけどお金は儲からない」だとボランティア、等々バランスを取るのはとても難しい。

しかし「好き」というのは結構罠がある。仕事として取り組んで詳しくなればなるほど嫌な部分も見えてくるもの。仕事は経済原理がはたらくから「コスト意識」「妥協」「利益の追求」など、理想の世界とはかけ離れた現実をまざまざと見せつけられ「こんなはずじゃなかったのに」とモチベーションが下がることが往々にしてある。

新入社員に限らず、好きなことしかやらない人間はどんな組織でも嫌われる。むしろ好きでなくとも苦手意識や好き嫌い無く淡々とこなす人の方が評価は高いのはサークルや部活、また社内でも同じ。

結論から言ってしまうと、好きなことを仕事にするのはさほど素晴らしいことでもない。場合によっては単なるワガママにもなる。本当に賞賛されるべきは、好きでもない責務を果たすこと。これが大人として、そしてプロとしての価値観だろう。

勤労の義務、納税の義務、扶養の義務。そういったことに背を向けず、大小に関わらず自分の責務を果たせるかどうか。これが大人の考えだだ。学生は本分が学業だから、いくらアルバイトで金を稼いで「自分はお金をもらうプロだ」と言い張っても、いつ辞めてもいいという選択肢がある点においてプロとは言えない。

身近な例で言えば父親や母親がどうして尊敬されるのかといえば、子供のために我慢・努力をして頑張っているからだし、同様に危険を顧みず火の中に飛び込んでいく消防士や、震災の時に瓦礫の撤去や遺体の収容作業など被災者救援作業を黙々とやっていた自衛隊員のような人たちも尊敬されるべき存在だ。

皆、必ずしも好きだからやっているとは言えない。しかし嫌々やっているのでもない。そこに責任を感じ前向きに取り組む、その姿勢が尊敬の念を呼ぶ。

ジャズ・ギタリストのマイク・スターンが雑誌のインタビューで「君がジャズ・ミュージシャンを目指したいならやめた方がいい。こんなに辛く苦しい職業はない。しかし君がジャズ・ミュージシャンにならなければならないのなら全身全霊で打ち込んで欲しい。こんなに素晴らしい職業は他にないのだから」というようなことを言っていた。

中途半端に好きな事が出来る会社を探すくらいなら、自分が使命感をもてる仕事とか、この人のためなら苦労してみたい、と思える会社(職場)など、「好き」とは離れた視点で考えてみてはどうだろうか。

自己分析をしても働きたい会社が見えない人には有効な考え方だと思う。