大人の作法

with コメントはまだありません

私は現在、賃貸マンションに住んでいる。自治会みたいなものが無いのでほとんど近所付き合いが無い。お隣さんが何者なのかさっぱりわからない。そういう住民の性質上の問題なのか、挨拶してもまともに返ってくることが少ないのだ。無視されてしまうこともしばしば。どちらかといえばイイ大人よりも小学生やお年寄りの方がよっぽど丁寧に挨拶をしてくれる。

 

就活生が会社をさがす時に「安定している会社」とか「成長できる会社」または「休みがきちんと取れる会社」という方向性で探す話は数多く聞くが「きちんとした社会人になれる会社」という軸は聞いたことが無い。

社会人とは単に働く人ではなく、社会を構成する一因を意味する。反社会性力の団体、つまりヤクザを社会人とは言わないし、引きこもっている人間も社会人と は言わない。ボランティアやNPO法人という形で活動する社会人も居るから、収入が多い少ない、または有る・無いで判断するものではないだろう。

つまり、社会人とは自分の好きなことをやることでも、収入を得ることでもなく、主に義務を果たすことを指す。一人前の社会人になることは、きちんとした人間関係を構築すること、また周囲に良い働きかけができる独立した人間となることなど範囲は大きく、会社はその一部の枠組み でしかない。良き部下になること、良き同僚になること、よき上司になることだけでなく、良き隣人になること、良き妻になること、良き夫になるこ と、良き親になること、良き指導者になること、数限りない。

 

社長は一緒に寿司屋に食べに行くと、板さんに「今日は何が美味しい?」とたずねる。そこで「うちは何でも美味しいよ」と答える寿司屋は駄目な寿司屋なのだそうだ。こだわりのある寿司職人、お客さんに美味いものを出そうと努力する寿司屋は、必ず自分で市場にネタを仕入れに行き自分の目で自慢のネタを仕入れる。全部が全部うまいなんてことは絶対にない。

この話、実はグルメ評論家の山本益文が偶然にも全く同じことを本に書いていた。それが「大人の作法」だ。美味しいものを食べたければコミュニケーションが大切だが、それは大人としてきちんとした人間関係を構築することでもある、というのが本の主旨でもある。

お金は稼ぐが尊敬出来ない人、仕事はできるけど挨拶すら満足にできない人、そういう人間が世の中にはたくさん居る。良い社会人になるためには単に仕事や会社の制度だけでなく、人間そのものを見ることも必要だ。