ウィンタースポーツなど全く縁も興味も無いくせに、やはりオリンピック女子カーリングは見どころ満載で全試合しっかりと観戦してしまった。
他の競技と違い、マイクを装着してその声がしっかりと入るという演出もまた面白いではないか。だが解説者が日本チームについて「特にコミュニケーションが優れている」と話していてふと疑問に思った。
いやいやどの国のチームもコミュニケーションは取っている。ただでさえカーリングは戦略がものを言う競技だ。難しい局面になればなるほど時間をかけ入念にチームで作戦を練っていく。そしてストーンを投げた後でも大声でスウィープの指示を出していく。
しかしよく見ていると日本だけが特に際立って声のトーンが高く、笑顔を絶やさず声を掛け合っている。無言や渋い表情など、悪い空気が流れるようなことが皆無。これが見ている方も実に気持ち良い。
もしも彼女たちが互いのミスを罵り合い、緊張感の中でけわしい表情で戦っていたらどうだろう。無言で渋い顔つきのままででいる選手と、それをまた無言で対応するチームメイトだっらどうだろう。たとえ金メダルを取ったとしても見ている側の共感は呼ばないのは想像に難くない。
テレビ解説者が言っていた「優れたコミュニケーション」とは、単なる文字情報の交換ではなく、チームメンバーを奮い立たせ、次の行動に集中させる、言葉以上の力を発揮するコミュニケーションのことだ。
反対に「優れていないコミュニケーション」は、周囲をネガティブな気持ちにさせモチベーションを下げてしまう意思伝達方法だ。
誰しもあの場でミスをしたいと思ってミスをするわけではない。そのミスをした選手本人が苛ついて舌打ちしたり道具に当たって投げつけたり蹴飛ばしたり、「ちくしょう!」と大声を荒げたり、または仲間がそのミスを罵ったり怒ったりすればチームはどんどんと険悪な雰囲気になっていく。良いプレーでもミスであっても、無言なままではそれは「不機嫌」というサインを周囲に振り撒いくことになる。無言だって立派なコミュニケーションの一つの方法なのだ。
新入社員研修で「挨拶は大事」「挨拶だけはしろ」と口うるさく言うのは、自分から不機嫌サインを振りまかないためだ。まがりなりにも社内にはチームメンバーしか居ない。ライバルは居るかもしれないが敵は居ない、という大前提がある。
世間ではテレワーク、リモートワークが叫ばれているが、出勤の良いところは気軽に相手を励ませることだと思う。挨拶する、声をかける、気にかける、アドバイスをする、雑談をする。
小さくさりげない心がけ、相手を気にかけているという気遣いがチームワークの第一歩となる。そこから始まる「優れたコミュニケーション」が、集中力が途切れそうになったときにも力になり、モチベーションが下がりそうになった時にも踏みとどまらせる不思議なパワーの源となる。
めざせ、優れたコミュニケーション。