今となっては黒歴史だが、高校時代にヘビメタバンドのベースを担当していたことがあった。ベースギターを持っていなかった自分にその役目が回ってきたのは、もともとのベース担当者が学園祭出演の都合に合わないとか、あまり大した理由ではなかったと思う。が、少なくともクラシックピアノ育ちの自分にとってはオシャレなイタリア料理屋で出てきた「たくあん」ほどに場違いだった。
本番のステージでは、ボーカルとギター二人、そしてドラムは超ノリノリで激しいアクション。しかし私は黙々と演奏に専念しほとんど動かない。ついたアダ名が地蔵ベース。しかし今にして考えれば最低な演奏者だと思う。たとえヘルプで参加しているバンドとはいえ、こんなにやる気が無さそうな演奏はバンド仲間にも見に来た観客にも失礼だ。演奏なんてちゃんと出来て当たり前。観客が求めているのはさらにその上なのだ。
と、随分と昔のことを思い出したのは今年から本格化したWEB面接を考えてのこと。
面接者から考えると面接官は観客だ。ただ単に質問に答えればそれでOKではない。その答え方にも工夫が必要だ。ぶっきらぼうに返事をするのか、ただ聞かれたことだけにYes, Noだけを答えるのか、それとも深く掘り下げて答えるのか。そしてWEB面接で重要なのは、相手に伝わるようなアクションがついているかどうかだ。
直接的な面接では息遣いや瞬き、場の空気感など、情報量は多い。しかしWEB面接はそれがごっそりと削ぎ落とさてしまう。音域も上下ともに大幅カット。実面接よりも声の抑揚も、答える内容も、そして頷きや返事も注意しないと、こちらの意図も気持ちも熱意も伝わりにくい。モーションが無いとエモーションが無くなってしまう。
そしてこれは面接官にとっても同じこと。私もZOOM面接ではカメラに近寄ったり遠ざかったり、また身体を動かしたり、画面の絵面に変化が出るように工夫する。本当は登場音楽や効果音を付けたいくらいだが、そこまでやるとやり過ぎか。
だがせめて登場音楽くらいはZOOMで標準装備してくれないかな、と密かに願っている。