業界研究という神話

with コメントはまだありません

先々週、休みをとって香港に遊びに行ってきた。私の香港好きはセブ赴任時に始まる。もともとは台湾に行くために乗り換えで仕方なく香港に一泊したのがきっかけ。その一回ですっかりハマってしまった。その後、仕事でも訪れるようになったが15回以降は訪問回数を数えるのを止めてしまったから正確な数は覚えていない。

もし海外旅行に初めて行くとしたら、どういう選び方をするだろうか?しかも特定の国にそれほど興味が無いとしたら?普通、予算と日程や時間で決めてしまうんではないかと思う。

グアムとセブと上海くらいだったら一括りだし、ヨーロッパ、アメリカもひとくくりにできる。南半球というならオーストラリア、ニュージーランド。アフリカと南アメリカも似たような予算や予定になるだろう。

結局、明確にどこへ行きたいという理由がなければ国や地域はまぜこぜにして、別の切り口で選択していくことになる。

私が就活でつねづね感じる不思議な言葉に「業界研究」がある。一般的には就職活動をするにあたって志望の業界について理解を深めることが有利、または大切とされているらしい。ほんとか?

実際のところ、学生は業界知識が深くなくとも就職に困ることもなければ不利になることもない。業界研究が役に立つのは、もともと大学入学時に明確な就職のイメージがついて特定の職業につきたいと計画していた、ごく少数の学生だけだ。

そもそも日本の新卒一括採用は経験を重視しない。入社してからの研修にウェイトを置いている。研修時期がバラつくと手間がかかるから企業はまとめて一括採用し、一斉に同じプログラムで教育をしていく。就職前の予備知識や理解に差があったとしても、就職後の数ヶ月や1年で挽回してしまうだろう。

「ほう、君はよくうちの業界を勉強してるねえ。偉いねぇ。」なんて、学生の生半可な付け焼き刃の知識に採用担当者は感心もしなければ有難がったりもしない。するわけがない。

それでも「業界研究」という言葉が一人歩きしているのは就職情報サイトのご都合だろう。業界で並べるその並び順は、すでにキャリアのある転職者には使いやすいものの(だからハローワークはこの並び順で、求職者には便利)、新卒求職者、特に特定の仕事につくことを明確に思い描けない学生には使い勝手が悪い。

あえて業界研究に意味を見出すとすれば、それは業界ごとの雰囲気の違いを知ることだろう。B to Bの会社はB to Cとは雰囲気が異なる。金融業界とマスコミもかなり社風が異なる。

この時期、第一志望の企業のアテが外れて目標を見失いがちの学生が多いかと思う。だが業界研究なんていう神話に惑わされず、自分の行きたい企業を自分の切り口で探すことが大切だ。私が意図せず訪れた香港にハマったように、自分の行きたい企業は偶然見つかることもあるのだ。