学生の夏休みにつづいてサラリーマンも分散して休みに入っているためか、スーツケースを持った人を電車でよく見かけるようになった。通勤で使用している京浜東北線は日暮里、上野、浜松町など成田や羽田に接続する乗換駅があるため、ひときわ旅行者が多い。
そんな中で先日、ガイドブックを一生懸命読んでいる年の頃は50代後半の男性を発見。どこの国なのかと思って目を凝らして背表紙を見ると「ベネズエラ」と書いてあった。
ベネズエラがどこにあるかは知っていても、ベネズエラに何があるのかがすぐに思い浮かぶ人は少ない。観光でこの国に行こうとする人はアメリカやヨーロッパ、中国やインドなど有名どころは行き尽くしてしまったか、または知人を尋ねるとか仕事で訪れるなど、特殊なケースだろう。私もベネズエラには全く興味が無いから、世界ふしぎ発見!の懸賞にでもあたってタダ券貰ったとしても人に譲ってしまい、自分じゃ行かないだろうと思う。
そんな私でもベネズエラという存在がほんのちょっと身体をかすめたのは技術の仕事をしている時だった。知人から「ベネズエラ産のダイヤモンド原石なら産地を特定して購入できるかもしれない」という噂を聞いたのだ。ダイヤモンドは産地を指定して買うことが非常に難しい。ものすごく遠い存在のベネズエラがちょっとだ け近くに感じた一瞬だった。結局行きはしなかったが。
仕事に絡むのであれば興味は湧く。興味というより、仕事であるからそれは責任とか義務でやらなければいけないことであるが、興味も無ければ自分に全く関係のない段階でベネズエラを勉強しておこうなんてのは無駄だ。
学生の時点でビジネス本を読もうというのはこれに近い。私もサラリーマン一年生の時に先輩から「すごく感銘を受けた」と聞いたのでドラッカーを読んだが、これがさっぱ り面白くない。きちんとしたMBA(経営学修士)の学校も実務経験が無ければ入学を認めないのはこの理由による。経験が無いのに理論だけ詰め込んでも得るものが少ないからだ。
そんなわけで、学生にはビジネス本を読めというのはあまりおすすめしないし、無理に読まなくともよいと思う。ビジネス本はそのうちに必要に迫られて読むようになるのだから。それに若いうちに読むべき本は他にいくらでもある。焦ることはない。