70/20/10の法則

70/20/10の法則というのは、能力成長における要素の比重のこと。人は経験から多くを学び、前輩や上司などの指導は2割ほどの効果しかなく、セミナーや読書などの座学から得るのは1割、というものだ。

この数値はアメリカのコンサルタント会社が提唱したもので、古くは60年代からすでに「人の成長に関わる要素のうち7割が経験から」という説は提唱されていたようだ。それが90年ごろに上記のように70/20/10の割合にまとめられたらしい。

しかしこの説、日本語でネット上を調べると孫引きのいい加減なものだらけで、きちんと書かれているものが無い。そこで原典Michael M. Lombardo、Robert W. Eichinger著「The CAREER ARCHITECT」をあたってみたところ、日本での通説とはちょっとニュアンスが異なる記述があったので2つほど紹介したい。

まずひとつめは、7割/2割/1割は足し算ではなく掛け算的に考えるべきという点だ。

経験だけ積んで人に頼らずば自己流となる。経験も無しに心当たりの無い指導をされてもお説教にしかならない。本ばかり読んで実践を積まなければ机上の空論。体を動かすことばかりで読書を遠ざけ勉強をしなければ発展が見込めない。

実践を経験し、先輩や先生からアドバイスをもらい、さらに自分で勉強をする。これら3つが良いバランスで作用しあって初めて成長につながる。それがこの70/20/10の意味なのだ。

そして2点目は、経験はチャレンジでなくてはならない、ということ。楽々やっていけることは経験しても悩みも無ければ疑問も浮かばない。低い山にいくら登ってもエベレスト登山の役には立たない。かといって負荷が高すぎて目標クリアが全く見えないようではモチベーションは下がってしまう。

学生の本分は勉強だといいつつも就活ではバイトや部活、ボランティア、留学など、学校外の経験を重視されるのは至極当然な話だ。学校という、ある種の閉鎖的な空間で得られる経験は特殊で汎用性に限度がある。アメリカでもインターンシップ重視というのは単に実践重視というよりも、社会との接点を求めているからであろう。

学校で真面目に頑張っていました、というアピールは70/20/10の法則からすれば10をアピールするような話で、採用側にはあまり響かないというのがこれでお分かり頂けるかと思う。