テクダイヤでは選考に適性診断テストをやっている。これは知能を測るものではなく、個人の好き嫌い、得意不得意などの性格を測るためのものだ。これを選考だけでなく全社員が受けており、組織分析にも役立てている。
私は人事担当ということもあり必要性から度々受験しているが、以前よりも物事を分析的に捉える傾向が強くなっていた。 仕事の環境によって変化するのだ。
そんなことより改めて気が付かされるのは、自分が全然海外向きじゃないという点だ。
私は高校生の頃から漠然と海外を股にかける仕事をしたいと思っていて、英語はそれなりに勉強し話せるようになり、大学時代にも4ヶ月ほどの放浪の旅に出たり、テクダイヤに入社後もフィリピンに3年以上駐在。帰国後もパスポートにハンコを押すスペースがなくなるほど海外出張に行っていたのに、である。
どのあたりが海外に向かないかといえば、ストレス耐性が低い点だ。汚い、臭い、そして飯がまずいとストレスが溜まる。趣味もオーディオとか絵画鑑賞とか、歌舞伎や浄瑠璃などの伝統芸能だったり、日本をベースに個人で楽しむものばかり。パーティーなどで知らない人と接するのは嫌いでも苦手でもないものの、そもそも好まない。
適性診断テストの結果を見ると、このことがよくわかる。私は新しいもの好き、変化志向が高い。これが自分を「海外向き」と勘違いした点だ。
そりゃ海外ってのは自分の知らない経験ばかりだから面白いに決っている。見るもの全てが新しい。しかし「好き」と「適性がある」は違う。自分では海外での仕事は面白いと思っているのだが、やたらとストレスフルなのだ。
同じようなことが新卒採用で学生にも見て取れる。例えば、非常に面接慣れした営業職志望の女の子たち。「誰とでもすぐ友達になることができて、人と接することが大好きだから営業をやりたい」と言う。しかし適性診断テストの結果は全然営業向きではない。彼女たちに共通しているのは人と話をすることが好きな、いわば寂しがり傾向の持ち主だったのだ。
好きな事と向いていることは違う。
営業に向くのは、相手の意見を変えるための説得性や、自分の意見を強く信じる独自性だ。既存顧客と世間話をすることや、他社製品が大好きな顧客の話を一方的に聞いてしまう傾聴力は売上UPに全く寄与しない。それとは正反対に、自社製品にネガティブな感情を持つ頭の硬い相手を言いくるめ、その考えをひっくり返してしまうことがセールスマンには求められる。
好きだからこの仕事がしたい、というアピールは単なる希望でしかない。就活ではいかに自分にその仕事を優秀にこなせるか、その能力の有無を証明できるかどうかにかかっている。
好きであっても向いていないこともあれば、好きでなくても向いていることもある。冷静に客観的に自分を見つめることが必要なのだ。