テクダイヤは国籍を気にしない。それは中途であろうと新卒であろうと一貫している。面白い社員を集めているうちに、自然と多国籍になっているのだ。中でも、もう辞めてしまったがトルコ出身のTはかなり面白い奴だった。
トルコ人というと黒い瞳に黒髪でちょっとエキゾチックでアラビアンチックな顔を思い浮かべるが、彼は金髪だったこともあって見た目はヨーロピアン。顔は現ジェームス・ボンドのダニエル・クレイグ似だ。
トルコ語はモンゴル語や韓国語と同様にアルタイ語系で語順が日本語とほぼ同じなためか、日本にいるトルコ人はおしなべて日本語が上手い。Tも御多分にもれず、完全に訛りが無い日本語で電話で聞いていると日本人と区別がつかないほどだった。
彼はトルコの国立大の日本語科を卒業。その後に来日し日本の国立大で日本史の研究、そして卒業後にそのまま日本で就職。なぜかプログラミングの会社に入っていたが、そこからテクダイヤへ中途採用で入社した。テクダイヤでは私の直属の部下として技術開発をやってもらっていた。(その当時は私も技術系の仕事をしていた)
すこぶる頭のイイ奴ではあったが天は二物を与えずで、かなりのおっちょこちょい。どこか抜けていて、ほとんどMr.ビーンのようだった。
あるとき、動悸がすると行って会社を中抜けして近くの病院に行ったことがあった。以下は病院から帰ってきた彼から聞いた話。
心電図をとることになり、「これに着替えてください」と病院服を渡された。すぐに胸がはだけるようになっている、短めのガウンのようなペラペラの簡易服だ。日本の病院で心電図を採るのが初めてだったから彼にはいまいち勝手がよくわからない。
「おぉ、裸で測定するのね」とパンツを脱ぎ、すっぽんぽんの状態で病院服一枚でベッドの上で仰向けになって測定を待っていた。そこに若い女性看護士さん登場。
「さぁ、前をはだけてください」と促され、パッと開くとチ◯コもろ出し。そしてそれに続く看護士さんの悲鳴。「きゃー!」
これではまるで薄暗い夜道に現れる露出狂の変態さんじゃないか。ちなみにトルコでは男も女も下の毛は剃るのがデフォルトだとか。彼も社員旅行で温泉に入るのが恥ずかしい、と言っていたのを思い出す。
彼はトルコに居たときも、運転していた車からちょっと離れている隙に車が動き出し「待てー、車ドロボー」と追いかけたことがあったらしい。衝突して止まった車に追つき、泥棒を引きずり出そうとドアを開けたら運転席には誰も座っていない。そう、サイドブレーキのかけ忘れで坂を車が落ちていっただけだった、という逸話の持ち主だ。
彼はテクダイヤで何年か働いた後、兵役をつとめるために退職し帰国した。現在は母国でトルコと日本の合弁企業の社長付き通訳として活躍している。