「いまどきの若者は内向きで海外志向が低い」なんていう話もあるが、少子高齢化で日本の人口は減少傾向にあり市場が萎んでくるのはわかりきっているのだから、販売先であれ製造先であれ、どこの企業もグローバル化を進め海外に出ようというのは自然の流れだと思う。
なので就職すると否が応でも海外に行かざるを得ないという場合もあるかと思う。そこで、海外赴任経験がある身としてアドバイスしてみたい。
海外赴任は楽ではない。特に、ホームグラウンドが日本という日本人にとっては、どんな国でも辛く感じるはずだ。
赴任地が先進国だとヨーロッパやアメリカのように距離的にはおいそれと帰るわけにはいかない。先進国は基本的に物価が高く、思ったほど贅沢はできない。帰国しようと思えば出費がかさむ。
逆に近い国、つまりアジア諸国が赴任地だと発展途上国のケースが多く治安が悪い。比較的経済の進んだ韓国でも赴任経験者に言わせれば、字が読めない・反日感情が強い・人間関係が日本のそれとはかなり異なり濃厚な付き合いを強いられる等、文字通り近くて遠い国とのこと。中国行けば行ったで今度は大気汚染で住みづらい云々。
駐在員はどの国へ赴任しようとも、出張者やお客さんが日本から来る度に食事やお酒のお供を強いられ、挙句、買い物や観光案内まで休日返上で付き合うことになる。トラブルは現地社員ばかりでなく仲間の駐在員が起こすこともあり、これがまた面倒。会社の付き合いばかりでなく自分の友人や家族・親戚がやってくると、さらに休むヒマもない。
独身ならまだしも結婚しているとさらに大変。反対に、単身で赴任すれば国内に残された家族の心配をしなければならない。どのみち心配の種は無くならない。
どの企業も赴任手当は出る。しかし30年以上前のグローバルという言葉が取り沙汰される前の時代ならいざしらず、いまどきどこの企業も海外赴任をすると家が建つほどの赴任手当なんか出すところは無 い。人材のグローバル化と流動化で給与体系そのものが見直されたからだ。日本語が出来て現地水準の給与で働く現地人はそれほどめずらしくはないし、また 日本人でも現地の人と結婚し現地水準の給与でもよいという、いわば現地採用も増えている。
だから給与で赴任を意味づけようとしても絶対に満足はしない。むしろストレス解消や帰国費用などで出費はかさむのが普通だ。
では何のために赴任するのかといえば、それは自分のためだ。その点で私は海外に出ることをおすすめする。苦しければ苦しいほど、その経験が自信となって将来の自分の糧となる。そういう意味では登山に似ている。
赴任では学校では教えてくれないことを学べるところだ。言葉の壁を越え、ようやく信頼関係を築いた社員にあっさり裏切られる苦さも、絶対無理だと思っていた技術を従業員たちが身につけて日本を上回る成果を出したときの感動も、どれも留学では経験できない。
そういう、お金を払ってもできない貴重な経験ができるから海外赴任はビッグチャンスなのだ。