楽しい仕事の罠

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理想的な仕事というのは1)自分の好きなことで 2)お金が稼げて 3)それが他人に感謝されること と定義した人が居た。しかしこれを全面的に肯定することはできない。なぜなら、他人に感謝されずお金にもならない自分の嫌いなことは、誰もやる人が居なくなってしまう。理想的な仕事を追いかけることを是とする論法は、やりたくない仕事は他人に押し付けてもいいということを認めることになってしまう。

就活では企業は耳障りの良いフレーズのオンパレードだ。給料が良い、残業が無い、好きなことができる、仕事が楽しい等々。ところが蓋を開けてみると激務をこなさないと給料がよくないとか、残業は無いときもあるが徹夜も珍しく無いとか、よくよく話を聞けばカラクリがあるのが普通だ。

特に「好きなことができる」「仕事が楽しい」というのは、考えてみればそんな都合のいいことはあるわきゃない、と大学生にですら分かる理屈なのに騙される就活生は後を絶たず、就職してから「こんなはずじゃなかったのに」と意気消沈する新人は多い。

いや、そもそも仕事が楽しくなきゃいけない、と考えることに大きな間違いがあるんじゃなかろうか。

世の中、楽しいとは言えない仕事はたくさんある。映画「おくりびと」で有名になった、遺体を処置して棺におさめる納棺師。死因特定のために解剖を行なう法医学者。震災のあった海岸で行方不明者を探す自衛隊員。それ以外にも世の中で3Kと言われる仕事など枚挙に暇はない。

以前に紹介した日本ソムリエ協会会長の田崎さんはテレビの番組で「朝から200もテイスティングしなきゃいけない時なんて結構つらい。みんなから良いお仕事ですねぇなんて言われるけど、好きじゃないですよ。仕事なんですから」と言っていた。

趣味であれ仕事であれ、一定のレベルを越えると辛くなるのが普通だ。お遊びレベルを超え、ステージが高くなるのだからそれは当たり前のこと。

大切なのは使命感と、そして「生き生き」と働くことだ。先に挙げた人の死にまつわる仕事、あるいは3Kと言われる仕事に従事していても、使命感を持って生き生きと仕事をしている人はたくさん居る。楽しさなど追いかけなくても一流と言われる仕事は出来るし、むしろ楽しさだけを追求すると一流にはたどり着けない。

だから就活生に言いたいのは、楽しそうな仕事を探すのではなく、生き生きと出来る仕事を探してほしい、ということ。就活生にとっていい会社というのは有名なことでも安定していることでも給料が良いことでもなく、社員が生き生きとしているかどうか。

就活に行き詰まっているのだったら、ちょっと視点を変えてそういう会社を探してみてはどうだろう。