字は綺麗でないと駄目か?

with コメントはまだありません

ついこのあいだ中国で開催されたG20で、安倍総理が宿泊したホテルの部屋に残した書き置きが中国のネットで話題になっている、という日本のインターネットのニュースを見た。ホテルに備え付けのメモ用紙に「感謝」という文字と安倍総理の名前。ホテルの部屋にそのまま残されたものだから、書いた相手は部屋の掃除担当の人など、ホテル従業員に宛てたものだと類推される。しかもかなりの達筆。

このニュース、日本の主だった政党の代表の文字などと比較されていて面白かった。就活では「手書きなんてナンセンス」という論調が大勢を占めるくせに、ココぞとばかり字の綺麗でないどこぞの党首がやり玉に挙げられていた。あれ、字と性格や能力なんて関係ないんじゃないの?と皮肉をいいたくなる。

実はエントリーシートなんかクソくらえ、と思っているのでテクダイヤでは提出不要だが、履歴書や作文は手書きを前提としている。

履歴書やエントリーシートの手書きについては学生の評判が良くないことはよく知っている。しかし、手書きをやめるつもりはない。これから何年も働き、最低でも年間数百万円ももらう企業に就職するのに、たった数枚の紙を手書きで書く行為が面倒くさいというのは、そもそも就職に向かないからやめたほうがいいと思う。

日本は中国の漢字から「仮名」という独自の字を創り出した歴史がある。現在でも漢字と仮名の組み合わせという独自の文化を、子供の頃から鉛筆、ボールペン、筆を使いながら知らず知らずに育んできている。こんなにバリエーション豊かな字体を操る国は日本以外には無い。

アルファベットを使う西洋は大文字小文字をあわせても50ちょい。その字数の少なさもあいまってタイプライターが広く普及し、手書きの習慣が廃れ、「字」そのものを大切にする精神や文化がそれほど発達することがなかった。アラブ文字もサンスクリットも綺麗な文字だと思うが、文字数自体はそれほど多いわけではない。

さて、好きな人から思いがけず告白されるとき、もしくは好きな芸能人や作家、芸術家などからファンレターの返事を貰うとき、手書きよりも印刷がイイなんて人が居るだろうか。

俳優のトム・クルーズが来日しファンサービスで実に2時間もサインや写真撮影に応じていた。印刷物を配って済ませるなんて絶対にしない。そう考えると手書きの良さ、大切さというのは分かりやすいと思う。

字は綺麗である必要は必ずしもない。綺麗だからその思いが伝わるのではなく、丁寧であることで思いが伝わるのだ。星野富弘が魂を込めて書く字を見て欲しい。

字をぞんざいに扱う人は仕事をさせても雑だ。この法則だけは確かだ。時折、きちんと書けば綺麗なはずなのに時間が無いためか書き殴ったような字を書く人が居るが、決して採用したいとは思わない。

また履歴書やエントリーシートに修正ペンを使うのは論外。就職して大事な契約書や、大切な取引先への書類に平気で修正ペンを使うのではないかと心配してしまう。

今時の就活では40も50も履歴書を書くから大変だ、という話も聞くが、就職後に要求される集中力や根気はそれどころではない。

テクダイヤはものづくりの会社だから、丁寧に仕事をすることに関しては特別な思い入れがある。

字は丁寧に書くべし。