雨漏り

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日本は4月から年度が始まるところが多い。学校、企業など、春の桜がその季節の到来を知らせてくれる。しかしフィリピンは4~5月が最も熱く、学校はこの間が夏休み。新学期は6月から始まる。正確に言えば6月だって熱いのだが雨が降るのでちょっとだけ暑さをしのげる。

熱帯の雨は、感覚的には雲の高度が低いような錯覚をするほど雨粒がでかい。車を運転している時にこうした雨が降ってくると、一粒一粒の雨がバチンバチンと大きな音を立ててフロントガラスの表面を叩く。バケツをひっくり返したような、という表現を上回る、バスタブをひっくり返したような雨でワイパーを最高速にしても前が全く見えなくなる。

加えて、紫外線が強いから、家の屋根の耐久性は低い。発展途上国でたいした建材が無いせいもあって、自宅でも工場でも、結構なショッピングモールの建物でも雨漏りは多い。私がフィリピンで住んだ家はハズレが多く3年で3軒も移り住んだが、どの家も見た目の豪華さとは裏腹に雨漏りだけでなく、お湯が出ない、電球が破裂する、シロアリが大発生するなどトラブルが多かった。その中でも一番雨漏りが酷かったのは2軒目の家だ。

ある朝目覚めると足元が冷たい。マットレスがびしょびしょになっている。天井を見上げると、「巨人の星」に出てくるようなボタボタ染み出す「かわいい」雨漏りではなく、傾いた天井板の切れ目が漏斗のようにベッドに狙いすまして雨水をゴボゴボと注いでいる。ある意味ウォーターベッドだが不快さは対極にある。日中はカンカン照りになるから外で干せばマットレスは完全に乾いてくれたが、家の中に居て雨に濡れるのはまったく意味がわからない。それでも本とか電気製品が水浸しにならなかったのは不幸中の幸い。

家は、ショットガンを持ったガードがゲートで警備をしている「ビレッジ」と呼ばれる高級住宅区画の中にあったのだが、このビレッジ内でも大雨が振ると道路の水かさが増して車が通行できないなんてこともある。フィリピンではパジェロとかランドローバーみたいな車高の高いSUVが人気だが、これは大変理にかなっている。普通乗用車だとビレッジ内で途中乗り捨て、膝まで水に使って家に帰る、なんてことがよくあるのだ。

しかし、いちいちこんなことを気にしていたら発展途上国には住めない。ハプニングは「いいネタができた」と笑い話にして楽しむ心持ちが必要だ。