摩天楼はバラ色に

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「摩天楼はバラ色に」(原題「The Secret of my Success」)は1987年に公開されたアメリカ映画。マイケル・J・フォックス演じるところの田舎の大学を卒業したばかりの若者が、大都会ニューヨークで就職をして成功をおさめるまでを描いたサクセス・ストーリー&ラブ・コメディー。

マイケル・J・フォックスといえば神映画として名高いバック・トゥ・ザ・フューチャーの3部作が有名だが、私が見た回数からすればこちらの「摩天楼はバラ色に」の方が多い。シナリオ本が当時出ていて何度も繰り返しみてセリフを暗記し英語を勉強した。音楽をデビッド・フォスターが手がけていて、その点でも秀逸。映画自体はやや古いが、音楽の方は今聞いても古臭さを感じない。

冒頭、主人公が色んな会社に面接に行くのだが散々断られてしまう。どこへ行っても「経験は?」と聞かれ、マイケル・J・フォックスが「経験が無くて就職できないんなら、最初の経験はどうやって身につけるんだよ!」と切れてしまう。

別の会社の面接では「せっかく大学行っても意味が無いなら、じゃぁ大学は何のためにあるんだよ」と詰め寄る主人公に、相手の担当者は「だって楽しかっただろ」と一蹴。

どちらのエピソードからも、アメリカが大学という場所を全くアテにしていない事がよく描かれている。経験や実績重視の考え方からインターンの経験が無ければ就職は難しい。

毎年会社説明会をやっていると英語に関する質問で「英語の研修はどのようにやっていますか」という質問が出る。テクダイヤはグローバル企業を謳い、製造も販売も海外が多いのだが英語の研修制度は無い。

学生にとって厳しい現実を指摘すれば、学校は学ぶところなのに対し、会社は学んだことを実践するところ。アメリカではそれが徹底しているから「勉強させてください」なんて姿勢で就活しても門前払いになる。

日本は徒弟制度や丁稚奉公など、半人前の子供を社会に参加させてじっくり育てるという文化が未だに残っているため、まだ卒業していない学生を青田刈りする就職制度が根強く残っている。が、これは一歩間違えると危険だ。

会社が提供してくれないと勉強できない、という言い草はすなわち「会社が提供しないことは勉強しなくていい」を意味し、また「教えてくれないから出来ません」を正当化してしまう。

会社に期待することは教えてくれることではなく、自分の実力や培った能力を発揮できる機会があるかどうか。100歩譲って学習ではなく訓練の場、場数を踏ませてくれる機会があるかどうかだろう。

冒頭紹介した「摩天楼はバラ色に」で主人公はひたすら「チャンスをくれ」と企業の門を叩いていた。そしてその言葉の通りチャンスをものにして上に上り詰めていく。

いつまでも学んでいく姿勢は大切だし、それは生きていく限り続くこと。しかしそれは自己に向けた姿勢であるべきで、他人(学校や教師)に要求できるのは学生時代まで。この切替が早くできないと就活も、そして就職後も成功しない。