ホーカーズ

ホーカーズ
ホーカーズ

正月になると「おせちもいいけどカレーもね」なんていうCMを知っているのは昭和世代だけなのだろうか。それはさておき、正月の料理に飽きると無性にカレーが食べたくなるのは人間の性だ。そこで今回はカレー店「ホーカーズ」の話をしたい。

慶応大学のある三田側と違い、テクダイヤのある芝浦側は俗にグルメ不毛の地と言われている。今や高層マンションが立ち並ぶこの地域も一前昔は船荷用の倉庫が立ち並ぶ倉庫街だったから食べ物屋がそもそも少ない。そんな芝浦でも数少ないおすすめの店、それがホーカーズである。

カレー屋と言えば小麦粉でとろみのついたカレーが日本では主流。それが最近はインド人が経営するインド料理店も多くなったがその多くは、カシューナッツなどのペーストを使ったクリーミーな味わいの北インドのカレーを出す店ばかり。

その点ホーカーズは、タイ風、南インド風、アイルランド風と、3つの異なるカレーを出す。特に、汁っけの多いサラサラとした南インド風カレーを出す店は都内でも少なく貴重な存在だ。

日本で最古のインド料理店である銀座のナイルレストランのオーナーのナイルさんも著書で「カレーを煮込んでうまいわけないでしょ」と書いているが、スパイス成分の多くは揮発性だから煮込めば香りが飛んでしまう。しかしホーカーズの南インド風カレーは本場さながらに食べるとガツンとした辛さと同時に脳天を突き抜けるような鮮烈なスパイスの風味がたまらない。おまけに安いのも魅力。500円ちょいで食べられるのだ。

店主の長澤さんがこの店を開くまでの話が本になっている。「インドのカレーは夕陽色」がそれ。カレーへのこだわりと熱意は、我々ものづくりをする立場の人間からしても共感・尊敬する部分が多い。長澤さんはアイルランド大使館でも腕をふるっていた一流の料理人だ。だから並のインド人がやっているインド料理屋よりよっぽど美味いと思う。その国の料理はその国の人が作っていないと本場でない、なんてことを言っていたらフランスの一流レストランを否定することになる。今やパリでは日本人シェフが居なかったらレストランが成り立たない、と言われるほど多くの日本人が活躍してるのだ。

そういえば昨年アメリカ・ボストンに出張した時、おそらく中国人が経営しているであろう日本料理屋で食事をする機会があった。厳密に言えば伝統的な日本料理ではないかもしれないが、出てくる料理は悪くない。いや、むしろ日本にあっても美味しい部類に入ると思う。日本の食材が出に入りにくい彼の地であることを考慮すればかなり健闘していると言える。

テクダイヤにたくさんの国籍の社員が居るのは、別にその特定の国と取引をするためではない。あくまでも1人の人間としてハイパフォーマーになり得るかどうかを問う。どの国籍でも、どんな人種でも、どんな学校を出ていても構わない。いい仕事でさえできれば。