グリーンマイル

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外国語を勉強するときにはその国の恋人を作るのが一番早い方法だ、と言われる。既婚者やすでに相手が居る場合どうするんだ、というツッコミはさておき教科書や教室で覚えるより実戦が大事ということには一定の真理はある。

大昔、まだTOEICが今ほどもてはやされる前の時代に富士通が全社員に受験させる!と決めた時、川崎の富士通周辺のフィリピンパブが大流行になったという笑い話がある。フィリピン人が全員英語が得意なのかといえばそうでもない。特に日本のカラオケで働いているフィリピン人の女の子達でも、英語よりも日本語の方が得意というのが居るから、あまりあてにならない。おまけに昼間には決して使えないような種類の言葉を現地語で覚えて盛り上がったりするから、楽しいかもしれないがあまり効率のよい英語の勉強法とはいえまい。

それはまだテクダイヤ本社が池袋に在った頃の話。その日は会社の近くで飲み会があり、日付も変わろうかという深夜にサンシャイン大通りを歩いていた時のこと。

おそらく身長2メートルくらいで筋骨隆々、映画「グリーンマイル」のジョン・コーフィー役をやっていたマイケル・クラーク・ダンカンか、と見まごうアフリカ系の男性が電話越しに怒っているのに遭遇。おそらく日本人の彼女と口論でもしていたのだろう。

「フザケルナヨ!スグコイヨ、イマスグ!ワカラナイヨ!」

電話相手にかなりヒートアップ。周囲もまったく見えていない様子。そこに、たまたまヤ◯ザっぽい、その筋の日本人が通りがかった。タイミングが悪かったのだろう。その日本人のおっさんはジョン・コーフィーに因縁をつけられた、と勘違いし激高。

「はぁ?てめぇ、誰に向かって口きいてるんだあ!」

うわぁ、喧嘩が始まる!と思ったその刹那、ジョン・コーフィー氏の放った一言に思わず二度見してしまった。

「ドナラナイデ!」

え?すごい女言葉(笑)

「アッチ、イッテ。ドナラナイデ!」「ウルサイカラ、アッチイッテヨ」

電車が無くなりそうだったので笑いをこらえたまま足早にその場を去ったので、その後どうなったかは知らない。

実戦で外国語を身につけるのは悪く無い。しかしネイティブでもない人間が実戦のみで外国語を身につけてしまうと敬語や丁寧語、正しい文法、男女の差、年齢の差などのニュアンスを汲み取り、綺麗な言葉を話せなくなることが多い。それがホームステイするような中学生や高校生ならまだしも、いい年の社会人がきちんとした丁寧な言葉を使えないのは知性や品が疑われる。

発音がネイティブっぽいことよりも、言葉遣いや中身の方がもっと重要だ。フィリピン人よりもアメリカンな発音で話をする大学生は多いが、会話の中身の点でフィリピンの知識階級の人たちときちんと話ができる人は少ない。

外国語を習得するには実戦も勉強も両方大事なのだ。