停電

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先月の中頃、2泊3日のスケジュールでフィリピン出張があった。その折、スタッフハウスに立ち寄るとかなりの規模の停電が起きていた。昔ほどではないが、相変わらず電力事情はあまりよくないようだ。

それは私がまだフィリピンに着任して一ヶ月も経っていなかった頃のこと。ある日家に帰ると電気がつかない。自宅のコンロはガスだからかろうじて料理くらいはできる。ろうそくの火で明かりを灯し食事をするところまでは良いが、テレビも見れなければシャワーも浴びることができない。ろうそくの明かりではろくに本も読めない。ビールを飲もうにも冷えてなくてぬるい。こうなると寝るしかない。

次の日の朝もまだ停電は続いていた。さすがにシャワーを浴びないと気持ちが悪いが、お湯が出ない。仕方がないから水のままシャワー。さすがにフィリピンでも朝はそれほど気温が高いわけではないから冷たい水のシャワーはさながら修行のようだ。

会社へ行き普通に仕事。そして家に帰るとまだ停電は続いていた。やけに長い停電だ。また飯食ってそのまま寝る。

次の朝もまた荒行のような冷水シャワー。しかし2日もこの状態ではさすがに辛い。次の日工場に出社し事務所の連中に「どうなってんだ!」とキレた。

事務所のスタッフが調べた結果は「電気料金が支払われていません」

えっ?は?なにそれ。

どうやら電気会社からの請求書が自宅に届いていたはずなのだが、それが無い。いや、そもそも家にポストなんぞ無いではないか。そういや郵便物は門の柵に差し込むか、敷地に投げ込まれているかどちらかだ。雨でも降れば下に落ちて、さながら昭和の空地に捨てられたエロ本のごとく興味が無ければ見むきもされないゴミに成り果てる。

いずれにしろ停電の原因が単なる料金未払いだったから、支払い後はすぐに電気は復旧した。この停電のせいで冷蔵庫の中の物はすべて腐ってしまい廃棄となった。それ以来、冷蔵庫に食料を買いためておくのを止めた。必要な分だけを必要な時にだけ購入するのが現地の知恵だ。

水シャワーの件も会社で文句を言うと「いや、うちはそもそもお湯なんか出ませんよ」「それ私も」など、お湯の出る社員が当時は1人も居なかった。そういえばフィリピンでは朝の通勤時間帯は髪が濡れたままの女の子を良く見かける。乾かすと髪に良くないというのが通説というが、実のところドライヤーが無いのだろう。お湯さえ出ない環境なのだからドライヤーを持っているはずはない。

フィリピンに限らず東南アジアは時間にルーズだと言われるが、これもあまり正確な言い回しではない。そもそもインフラが日本のように発達していないのだ。市民が利用するジプニーと言われる乗合バスもいつ来るのかわからない。乗れたとしても道路は渋滞だらけ。自家用車でも無ければ時間を守るのは難しい。我々でも会社の車が利用できないときにタクシーで出かけようとしても、そもそもタクシーが30分も来ないことも珍しいことではない。

お湯のシャワーにしろ時間を守ることにしろ、何が「常識」で「非常識」なのか、自分の立ち位置と相手の立ち位置をわきまえつつ、しっかりとした判断が出来ることが海外で仕事をする上で大切なのだ。