Talented!

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最近はあまり練習していないのですっかり腕が鈍ってしまったが、子供の頃から楽器に慣れ親しんできたおかげでフィリピン赴任時代には演奏を披露する機会があると結構ちやほやされた。だがその褒め言葉が私としてはなかなか受け入れがたい。それがYou are so talented.だ。

楽器というのは好きでなくとも、またどんなに才能が無くとも気長に今気強く練習すればなんとか演奏できるようになるものだ。これは利き手でない手でお箸をつかったり、ボールを投げたりするのに似ている。私が楽器の演奏ができるようになったのは才能ではなく、才能の無さにもめげずに気が遠くなるほど練習し続けた努力の結果だ。特に時間のかかるピアノなどは余計にそう思う。ちょっとやそっとで弾けるシロモノではない。

もちろん、好きになることも一つの才能だから、ずっと好きであり続けて努力し続けるというのもあるが、日本人の場合「我慢して精進する」「修行する」という考えは強いだろうから、Talentedと言われると違和感がある人は多いと思う。

欧米も基本的には「好きこそものの上手なれ」だから、苦しい思いをして我慢する修行は新鮮味があるのだろう。ジャッキー・チェンの主演でリメークされた「カラテキッド」でも、弟子の子役は何の役に立つのか分からない練習を理不尽にずっとやらされ続ける。それが、あるとき突然強くなってて本人すらビックリ、というギャップが面白さにつながっている。好きでもないのにイヤイヤやっていたらいつの間にか上手くなってるじゃん、というやつだ。

その感覚からすると、3歳くらいからスパルタ教育が始まる日本の伝統芸能の能や狂言、歌舞伎など、彼らにしてみれば幼児虐待にしか映らんだろうなぁ。

もちろん、日本人的な「修行感」と、「好きこそものの上手なれ」という彼らの感覚と、どちらが正しいということはない。あくまでスタイルの違いでしかない。が、好きな事なら一生懸命で、好きでないことを我慢しないフィリピン人に、「仕事だからやれ」のような日本人スタイルを押し付けても、マネージメントはうまくいかない。柔軟にマネジメントスタイルを変化させることがグローバル人材の要件でもある。