クリーンルーム

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昨日まで有給休暇を取って4日間旅行をしていた。旅行前にうっかりして食パンを冷凍するのを忘れていたら、案の定カビが生えていた。かなり湿度の高い状況下だからカビも生えるのは不思議ではない。しかし大手メーカーのパンはもともとカビにくい。街の手作りパン屋の方がよっぽどカビに弱い。この違いが出るのはなぜか?

よくネットで議論されるこの話、結論から言うと、大手メーカーは何らかの化学物質を製造過程で添加しているものの、規制があるから残留物としてカビそのものを防ぐほどには残っていない。カビが生えないのはクリーンルームという特殊な環境で製造をしているから、なのだそうだ。

テクダイヤでも製造現場ではクリーンルームを使用している。クリーンルームとはゴミが無い特殊な部屋のこと。その規格は細かに決められている。テクダイヤのクリーンルームはクラス10,000程度。これは0.5ミクロン(1万分の5ミリ)のゴミが1立法メートルに1万個まで、という規格だ。通常の野外は100万ほどのレベル。家の中だって50万以上はあるから、10,000のレベルは相当に綺麗だということがわかるだろう。

クリーンルームの壁や天井、床の素材もホコリを出さないのは当然のこと、人が中に入るためにはホコリが出ない特殊な繊維で作られたクリーンスーツという制服を着用しなければいけない。靴も専用の靴、そして専用のマスクを着用する。鉛筆は芯からカーボンのゴミが発生するから使用禁止。ノートも通常の紙では紙粉としてホコリが出るから特殊な紙で作られたノートを使用する。クリーンルームの入り口の床には粘着性のテープが張ってあり、靴の底についたホコリを除去する。同時に、エアシャワーという風のシャワーでスーツについたホコリを落としてから入室する、という徹底ぶりなのだ。

手作りパン屋のような普通のパン屋ではクリーンルームなんて高価な設備は使うことはできないから、当然パンはカビる。カビの毒は残留添加物の比ではない。美味しいかどうかは別として、街のパン屋と大手パンメーカーのパンで、どちらが危険性が無いかといえば自明だ。

最近、半導体不況で富士通の工場が電子部品の生産を止め、LEDを用いた野菜の栽培を始めたというニュースがあったが、あのレタスも通常の露地物の野菜に比べて腐りにくいのだという。クリーンルームのクリーン度は地道な努力によって到達される。そういう地味な積み重ねが製品の精度や性能を上げているのは半導体も食品も変わらないのだ。

さて、韓国や台湾へ頻繁に出張している時に顧客のクリーンルームでよく作業をしていたのだが、マスクがやたらと臭い。何やらカニの腐ったような匂いがする。それがどういうわけかどの工場へ行っても同じ匂いがする。違うメーカーが作っているのだが傾向は同じだ。もうちょっとマシなマスクは作れないものか。

と思っていたがあるとき気がついた。自分の口臭だった。どうりで同じ匂いがどこでもするわけだ。同じことを考えた人が居たのだろう。ある時から活性炭入りのマスクが普及するようになった。めでたし。