フィリピンは外国人の不動産(土地)所有を原則認めていない。そこで日本人はたいてい現地の信用出来る人間の名前を借りて家を買うことになる。セブでも現地の日本食のレストランというのがフィリピン人の奥さん名義だったり、または現地のビジネスパートナーの名前を借りるパターンが普通だ。
ところがお店が繁盛すると途端に欲をかいた連中がノコノコと出てきてお店を全部乗っ取ってしまう、ということがしょっちゅう起こる。だから日本食レストランで日本人が経営し味を管理し続けているところは意外に多くはない。
特にラーメンという食べ物は基本構造が簡単で、これだけWorld Wideな食べ物になってきたためにフィリピン人だけで経営しているところは多い。かつてはラーメンとは名ばかりの怪しいお店が少なくなかったが、セブの発展とともに競争原理が働いたおかげか変なお店は淘汰されたようだ。
フィリピンでもラーメンは味噌、塩、醤油と揃っているのだが、どういうわけか「塩」を頼むと醤油が出てくることが多々ある。「SHIO」の子音Sの発音で判断してしまうのか、このような間違いも一度や二度ではない。
もっとも間違った物が出てきても作り直しさせるほど意地悪ではないので出てきた醤油ラーメンを食べることにしているが、これを避けるためには注文時に「Shio, SHIII-OOOO. Please repeat after me, SHI-OOO.」と、ほとんどズームイン朝のウィッキーさんのように念押ししなければならない。ん?ウィッキーさん知らない。あ、そう。ま、いいや(笑)。
そんなセブでのある日、連日のお客さんの接待で胃が疲れ、さっぱりしたラーメンが食べたいと思い、いつものように何度も念押ししながら塩ラーメンを頼んだときの出来事。
ようやく出来上がった塩ラーメン。しかし運んできた店員の女の子が満面の笑みで発した元気な一言「サービスでコーンとバターを追加しておきましたッ!」で、飲んでた水を鼻から噴き出した。
オイオイ、こっちはさっぱりしたラーメンが食べたいのに。しかもフィリピンのバターって変な香料が入っててかなりクドイ味がするのだ。
まぁ値段も安いから諦めもつくし、ここは女の子のその屈託の無い笑顔に免じで許そう。これくらいのことでイライラしてはいけない。フィリピンでは何事も忍耐が必要だ。
このすれ違い、就活生にとっては笑い事ではない。グループディスカッションにしろ面接にしろ、問われていることをきちんと理解し的確に返答することは結構むずかしい。「いやいや、それを聞いてるんじゃなくて~」というシチューエーションは日常茶飯事だ。
「あなたが学生時代に頑張ってきたことは?」という質問はバイト先の友人と店長の不倫話のエピソードや部活の大会の順位を聞いているのではなく、その頑張りが会社に入って通用するのかどうかを聞いているのだ。「趣味は?」と聞かれてもそれは緊張を解くための世間話ではなく、仕事で発揮すべき集中力や探究心・好奇心があるかどうかを問うているのだ。
自分の提供するものに、知らず知らずのうちに望まれない物を入れていないか気をつけるのは、ラーメンも就活も同じことである。